niwakaの“あくまで個人の感想です。”

その名の通り熱しやすく冷めやすい"niwaka"が、徒然なるままに色々なことを書き散らします。

古代中国の南方に日本の妖怪を見た!?

 本日雨の中、特別展「中国 王朝の至宝」を観に行ってきた。

日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「中国 王朝の至宝」


 蜀王朝、夏王朝、殷王朝と見てきて、次のコーナーは楚王朝だった。そしてある展示物を見たとき、目を疑った。

「こ、これは、塗仏!?」


展示物の前で何度も「塗仏、塗仏」とぶつぶつ言っていたのは私です


 塗仏。メジャーではないものの、「由来不明」という点では珍らしさランキングの上位に入るであろう、図像のみ伝わっている、妖怪好事家としては「絶滅妖怪種」とも呼ぶべき妖怪である。以下、現在まで伝わっている「塗仏」の図像。
p1
(『化物尽くし』版/制作年代-不明)

p2
(『百怪図巻』版/制作年代-1737)

p3
(『化物絵巻』版/制作年代-1800年代?)


 そしてこれが、今回の展示で私が目にした像だ。
p0


 会場及び図録の解説によると、「羽人」(仙人のこと)と呼称されているが、これは仮称で、実際は詳細不明だそうだ。木と革で作られており、全面に黒漆が塗られている。ますます「塗仏」だ。

 楚は長江(揚子江)の中流域で隆盛を誇った王朝だ。中国の古代史において、黄河文明とは別に、長江でも隆盛を誇った複数の文明があることを知ったのは、京極夏彦氏の『塗仏の宴 宴の始末』だった。この時に語られたのは楚よりも更に上流域、更に遡った年代に存在した蜀王朝の文明に纏わる話で、「燭陰」と呼ばれる妖怪との関連である。
 先の像の下部には、平べったい生き物を模した台座がある。解説には「ガマに似る」と評されているが、もしこれがガマではなくヒキガエルを模したものであれば、像の正体は「西王母」の可能性がある。というのも、蜀王朝の遺跡発掘に関わった中国の学者、徐朝龍氏の『三星堆・中国文明の謎』によると、ヒキガエルは西王母に最も近い眷族だからだ。また、西王母は鶴に乗った姿で描かれることもあるので、可能性は更に高くなる。

 だが、中国の古典である『山海経』によると、西王母は「虎の牙と豹の尻尾を持つ」とされている。さて像を見れば、どう見ても鳥類の下半身だ。そして口は、鳥の嘴のように突き出されている。つまり像は「西王母ではない」ということになる。

 では結局、この像の正体は何なのか。

 実は、先の『山海経』では、神々の多くが「人面鳥身」の姿で描かれている。ならばこの像も蜀王朝同様、楚王朝の滅亡と共に滅んだ神なのではないだろうか。楚王朝が栄えた時代は、日本では弥生時代に該当する。倭の奴国王は後漢へ通使して交易をしていた。ならば楚と交易していた小国があってもおかしくはない。その過程で楚の文化が日本に流入し、現在展示されている像とは別の、しかし同型の像を何者かが複写し、受け継がれていく内に情報が散逸して図像のみが残った。その可能性も皆無ではないのだ。

 無根拠の話である。情報を切り貼りしただけの、継ぎ接ぎだらけの妄想話だ。だが、塗仏の図像とこの像の造形。「偶然似ていただけ」とは思えない。


【参考書籍】
図録『中国 王朝の至宝』



文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)
(2003/10/15)
京極 夏彦

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百鬼解読 (講談社文庫)百鬼解読 (講談社文庫)
(2006/08/12)
多田 克己

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妖怪図巻妖怪図巻
(2000/06)
京極 夏彦、多田 克己 他

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妖怪事典妖怪事典
(2000/04/01)
村上 健司

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三星堆・中国古代文明の謎―史実としての『山海経』 (あじあブックス)三星堆・中国古代文明の謎―史実としての『山海経』 (あじあブックス)
(1998/05)
徐 朝龍

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