niwakaの“あくまで個人の感想です。”

その名の通り熱しやすく冷めやすい"niwaka"が、徒然なるままに色々なことを書き散らします。

03-01

「皆様に急遽集まっていただき、申し訳ありません。実は先程、麓の役場よりレベル4の雪崩注意報が伝えられました。解説しますと、刺激を与えて雪崩を誘発させないように外出の自粛を促す、ということです」
「おいおい。だったら、逆に早くここを出ないといけないんじゃねえのか?」
 茶髪の男が言う。他の三人も同意する発言をした。
「いえ、いけません。レベル4の注意報が伝えられた、となると、表層雪崩が起きる可能性が高いのです。表層雪崩はとても繊細です。時間が経って固くなった雪面に現在のように新しい雪が積もることで、線香の上にある燃えたばかりの灰が落ちるように、ちょっとした振動で起きる可能性がある雪崩なのです。車の振動ですら雪崩を引き起こすきっかけになる可能性もあります」
「あのー」
 笹谷さんが、おずおず、と手を上げた。
「雪崩が起きたら、このペンションも潰される危険があるのではないでしょうか?」
「はい、そのとおりです。ですから当ペンションを建てる際、立地場所として雪崩が起きにくい所を慎重に選び、また行政と交渉して、防護柵や防護ネットを必要箇所に張ってもらいました。ただ、やはり交通の便を考えると、時にはどうしても雪崩に遭う危険性が高い地域に道を通す必要がありまして、今回のように雪崩が起きる危険性が高くなると、そこを通行止めにする必要が出てきます。ですから、雪崩の心配がなくなるまでは、ここにいていただくことになります。もちろん、延長した日数分の宿泊費等はいただきません。他にご質問がある方はいらっしゃいますか?」
 私たちも含めて客グループ内で話が始まる中、一人、食堂を出ていく人がいた。私はドアが閉まる音で初めてその人を意識して見たので、黒いセーター、痩せた体、ぼさぼさの髪の後ろ姿しかわからなかった。多分、あの人が唯一夕食時にいなかった人物なのだろう。
「ペンションに閉じ込められた宿泊客とスタッフ、か。かまいたちの夜を思い出すな」
 そう言ったのは綾瀬さんだ。何それ、と東里さんが尋ねる。私たちも二人の会話に耳を傾けた。
「子供のころプレイしたテレビゲームのタイトルだよ。吹雪に見まわれたペンション内で殺人予告状が発見されて、本当に殺人が起きる。プレイヤーは選択肢を選んで進めるんだけど、選択によってはすぐに事件が解決することもあるし、連続殺人になって最終的に自分の恋人が犯人だった、っていう結末になることもある。今で言うマルチエンディングゲームだね」
「ふーん」
「何か起きることを期待しているわけじゃないけど、二時間ドラマのように都合良く何か起きても、作り物と違って固定電話も携帯電話も使えるし、何か起きたら警察の指示を仰いでそれに従ってそれで終わり、さ」
「まあ、そうねー」
「それにしてもさー、せっかくスキーしに来たのに外に出られないんじゃ、何すりゃいいのさー」
 頬杖をついて、裕子がぼやく。
「それもそうね――」
 室内用の遊び道具がないか、黒川さんに訊いてみた。
「まあ、定番のトランプにUNOがあることは覚えていますけれど、それ以上は倉庫を見てみないことには。谷野さん、香葉村さん、一緒に来てくれませんか? 香葉村さんは私と倉庫の整理を、谷野さんは遊び道具のリスト作りをお願いします。皆さん、我々はしばらく席を外しますので、ここで談話するなり部屋に戻るなり、ご自由に行動してくださって結構です。ただ遊び道具を借りたい方は、ここでしばらくお待ちください」
 私たちにそう伝えると、黒川さんたちは食堂を出ていった。次に、私も失礼します、と笹谷さんが出ていった。
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