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風月文語の適当徒然

風月文語(ふうげつ ぶんご)です。適当に徒然なことを記事にします。

掌編 「トオリモノ」

「ふー」
「お疲れさん」
「あ、井上さん。恐れ入ります」
「今日捕まえたあいつ。取調で何て言っていた?」
「まあ、流行りの常套句ですよ。つい手が出た、です。人をホームから突き飛ばしておいて、それで通用すると、本当に思っているんですかね」
「…………」
「井上さん?」
「……お前さ、トオリモノって、知ってるか?」



「トオリモノ?」
「通り者。昔読んだ本に書いてあったんだよ。何処にでもいて、人に憑いては憑いた者の心を乱す。通り悪魔、または通り魔とも呼ぶ。風の姿をしている時もあり、その時は通り風とも呼ばれる」
「井上さん。もしかしてそんなオバケ話を信じてるんですか?」
「いやあ、信じてるわけじゃない。ただな、衝動的な事件は昔も今も起きているだろ。なら昔の人は、衝動的に事件を起こさないようにするために何をしていたのか」
「…………」
「その本には、通り者が憑いた際に起こる衝動を抑える方法も書いてあった」
「ど、どんな方法ですか」
「…………知りたいか」
「え、ええ」
「とても簡単だ。心を落ち着けて、衝動に打ち勝て」
「そ、それだけ……ですか?」
「それだけ、だ。だが、案外簡素な方が解り易いかもな。理屈をぐだぐだと並べても通じないやつには通じない。むしろ、心を落ち着けろ、と一喝した方が落ち着くかもしれん」
「はあ……」
「まあ、誰にでも通り者が憑く可能性はある。だからヤツラの誘いに引き込まれないようするためには、普段から心神を鍛えておくべきなんだろうな」
「トオリモノはともかく、心神を鍛える云々は俺でも理解できますね。あ、広報にトオリモノ・キャンペーンを頼んだら、やってくれますかね」
「気をつけろ、ヤツラはどこにでもいて、あなたの心を狙ってる、か?」
「……ぷっ」
「ははははははっ」
「あはははっ」
「そいつはおもしれぇ。ちょっと提案してみろ」
「えー。わかりました、今度言ってみますよ」
「ははっ。じゃ、お先」
「お疲れ様です」



―終わり―
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テーマ:小説 - ジャンル:小説・文学

コメント

返答

コメント、ありがとうございます。
実は、「トオリモノ」の解説の件は専門書籍からアレンジを施した上で引用しています。
100%の創作は難しいですね。

  • 2009/08/04(火) 21:20:10 |
  • URL |
  • public-enemy #quSBhyNc
  • [ 編集 ]

No title

こういうショートストーリーみたいなのいいですね!
面白くて読みやすかったです

  • 2009/08/04(火) 19:04:44 |
  • URL |
  • ネモ #LEUra8kw
  • [ 編集 ]

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