食後に紅茶やコーヒーが振る舞われたあたりで、黒川さんが話し始めた。
「これからのことですが、まず私と香葉村君は、賀宮さんの遺体を下ろして寝袋に移し、ペンションの傍に埋めます」
この言葉に私たちはどよめいた。こういう状況では現場保全のために、発見時の状態を保っておく、というのが常道なのではないだろうか。
「皆さんの戸惑いは理解できます。しかし、遺体をあのままにしておいては、いずれ臭い――死臭が建物中に広がります。既に遺体からは排泄物等に因る臭いも出ていますから、これ以上皆さんに不快な思いをしていただくわけにはいきませんし、雪中に埋めれば冷凍庫に入れた食材のように、腐敗の進行が抑えられます。これは私の独断によるものと、皆さんには後で警察に証言していただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
皆それぞれ、互いの顔を見る。特に反対をする者はいなかった。
「ありがとうございます。では、我々が作業している間に何か用事があれば、谷野に頼んでください。大抵のことはできますから」
子供扱いしないでください、と谷野さんが文句を言った。
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