niwakaの“あくまで個人の感想です。”

その名の通り熱しやすく冷めやすい"niwaka"が、徒然なるままに色々なことを書き散らします。

ep05-06

「――まず、宿泊客の賀宮様がお亡くなりになりました。このことを麓の警察や自治体に知らせようとしたのですが、電話線が切られ、モジュラージャックが無くなっています。予備の部品も所在不明です。携帯電話もなぜか繋がりません。建物の隅々まで移動したのですが、どこも圏外でした。原因は不明です。外部と、一切連絡ができない状態です」
 外の誰とも連絡ができない。この事態を、私はどこか他人事のように感じていた。というより、あまりにもうそ臭く、現実として受け入れることができなかった。なーんちゃって、と黒川さんが笑顔で言う姿を、何度も想像した。しかし、黒川さんは笑顔を浮かべずに話を続けた。
「まだ外は吹雪いており、直接麓に向かうことも危険です。申し訳ありませんが、しばらくの間はここに留まることをお願い致します」
「ふざけんじゃねえ!!!」
 茶髪の男が立ち上がり吼えた。だいぶ呑んだのか、目が据わっている。
「誰だよ、電話を使えなくしたのは! 怒らねえからよ、誰だよ?」
 誰も、何も言わない。ただ彼を見ている。
「――畜生!」
 男は椅子を蹴り飛ばし、食堂を出ていった。乱暴な足音が遠ざかった後、えー、と黒川さんがまた話を始めた。
「また、決して自暴自棄にならないでください。食料も燃料も充分に蓄えがありますし、連絡がつかないことが分かれば、麓から救援が必ず来ます。それまでご辛抱ください」
 そう締め括ると、スタッフの二人に朝食の用意をするよう指示した。二人も慌てて動き出す。
 まだ現実を受け入れられない私は、ぼんやりとした頭で綾瀬さんに訊いた。
「――あの、話の結末はどうなるんですか?」
「ん? ああ、結末ね。――母親は、母親は怒って息子を八つ裂きにした。または、狂乱状態のまま息子を獲物だと思い込んで八つ裂きにしてしまったのさ」
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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