niwakaの“あくまで個人の感想です。”

その名の通り熱しやすく冷めやすい"niwaka"が、徒然なるままに色々なことを書き散らします。

ep04-02

「さっきの話ですけど、魔が差す、という言葉もそうなんですか?」
 そう質問してからペアになった札を捨てた。
「みたいだね。本来は魔心と呼ばれる悪い気が心の中に自然発生することだったんだけど、日ごろの本人からはあまりに考えられない事態ゆえに、原因や理由を外的要因に求める際に、魔というモノを憑き物として生み出した、という話だったよ。おっ」
 綾瀬さんがカードを出した。
「ちょっとー、難しい話しないでよー。もっと楽しい話しよー」
 裕子が口を尖らせて言った。
「ごめんごめん。ちょっと気になっちゃったものだから」
「お待たせしました。シャーリー・テンプルとブラック・アンド・タンです」
 黒川さんが飲み物を持ってきた。
「シャーリー・テンプルって、レモンジュースなんですね」
 グラスの縁にかかっているレモンの皮を使った飾りを見て私が言うと、
「ジンジャーエールを使用することもありますが、今回はレモネードにしてみました」
「このカクテル、なんかミルクコーヒーみたい」
 頼んだカクテルを眺めて裕子が言う。
「ミルクは入れていますが、コーヒーではないです。まあ飲んでみてください」
 勧められてカクテルを口に運ぶ。口に入った途端、彼女の目が丸くなった。
「はー、コーラなんですかー」
「そのとおりです。いかがですか?」
「ミルクが入っているんで、普通のコーラよりもスッゴク飲みやすいです!」
 そう言うと裕子はまた、ハァ~、と感心の溜息をついた。
「コーラをミルクで割っただけですのでご自宅でも簡単に作れますし、ミルクの量を調整することでその時の気分に合った喉越しを楽しむことができるカクテルです」
「へぇ~」
「では、東里さんと綾瀬さんが注文した飲み物を出さないといけないので、一旦失礼致します」
 そう言って、黒川さんはカウンターへ戻っていった。
「あ、あがりー」
 裕子は最後の札を出すと諸手を揚げた。気がつけば綾瀬さんの持ち札は残り二枚、私は一枚だ。綾瀬さんはいっぱいに腕を伸ばして、二枚の札を私の目の前に突きつける。緊張を感じたのでカクテルを一口、喉ではなく心を潤す。そして、ふうっ、と軽く息をつき、再び心が迷う前に素早く一方の札を取った!
 確認する。
「っしゃー!」
 私は叫んで、仲良く揃った二枚を場に出した。続いて綾瀬さんが、あーあ、と残った札を、ぽん、と場に出す。スペードのA。
「Aだったんだー」
 最初に伏せられていた札を確認する裕子。横からのぞくと、伏せられていたのはハートのAだった。
「♪~♪~♪~」
 東里さんが鼻唄でキャンディーズの『ハートのエースが出てこない』を奏でた。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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