niwakaの“あくまで個人の感想です。”

その名の通り熱しやすく冷めやすい"niwaka"が、徒然なるままに色々なことを書き散らします。

03-02

 それから綾瀬さんが用を足しに食堂を出ていった。
「あーあ、こうなるってわかってたら、リョーコたちと沖縄に行けばよかったなー」
 茶髪でセミロングの女性がそうぼやくと、
「なんだあ? スキーしようって言い出した俺が悪いってか?」
 茶髪の男が彼女に詰め寄った。後はお決まりの売り言葉に買い言葉。もう一人のショートカットの女性がセミロングの加勢にまわり、スポーツ刈りの男が、止めても無駄、という顔をしつつも両方の制止に努めることになった。
 それをぼんやりと眺めていると、東里さんが声をかけてきた。
「ねえ、黒川さんたちが遊び道具を持ってきたら、四人でやらない?」
「あ、いいですねえ。何をします?」
「何ができるの?」
「トランプにUNOはできますね。それから、あ、私も裕子も麻雀はできますよ」
「へえ。麻雀ができる女の子は珍しいわね」
「え、そうなんですか? まあ私たちも、高校のときに男友達から教えてもらったんですけどね。裕子はなかなか悪(ワル)でしてね、安いあがりを何度もすることで結果的に勝ちをもぎ取るってゆー」
「あ、ひどーい。それ、かよののことじゃないっ!」
「あ、聞こえてた?」
「聞こえるように話してたんでしょ」
「ま、そうなんだけどねー」
 えへへー、でごまかす。
「本当のことを言うと、裕子は変なところで運がいいんですよねー。東場の」
 親になった時、と続けようとした時、ゴツッ、という音とそれに続いて何か倒れる音が聞こえたのでその方向を見ると、茶髪の男が拳を突き出していて、セミロングの女性が倒れている。
 みんな何も言わない。ただ、男を見ている。
「……なんだよ」
 わが身に刺さる、殴られた顔を押さえた女性を除いた五人の視線に耐え切れなくなったのか、男が言葉を発した。だがそれは余計にその場の空気を気まずくしただけだった。男は短く唸ると扉に向かい、途中、扉の前で戻ってきた綾瀬さんにぶつかりそうになり、彼を睨みつけると食堂を出ていった。直後に仲間の二人が女性に駆け寄ったが、この場合どうしたらいいのかわからないようだ。
 その場にいなかった綾瀬さんに東里さんが何が起きたのかを話すと、綾瀬さんが彼らの傍に行き、
「リラックスできるようにそこのソファーに寝かせるからどっちか手伝ってくれ。彼女の着ている上着は脱がせて丸めて枕に使う。もう一人は黒川さんの所に行って氷袋を作ってもらうよう頼んで」と一息で言った。
 この助けを予期していなかったのか、二人は、ぽかん、とした顔で綾瀬さんを見る。早く、と綾瀬さんが発破をかけるとスポーツ刈りが慌てて食堂を出ていった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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