ヴァージン 処女の文化史
象徴として神聖視または特別視される一方で、そうであることにマイナスの印象を持たれがちな「処女」。処女はどのような過程を経て、この自己矛盾を獲得するに至ったのか。
長い歴史の中で宗教やイデオロギーに翻弄されてきた「処女」を様々な面から分析し、偏見(ファンタジー)を解体し、真実(リアル)を日の下に晒した、読む者が抱える女性性・処女性の価値観を大きく変える(かもしれない)好著。
第一部はセックス/SEXとしての処女を解剖学の視点から分析、第二部ではジェンダー/GENDERとしての処女を歴史学の視点から分析しており、その中で様々な偏見や幻想がどのようにして培われていったかを紹介し、それらが誤った認識であることを解説している。
分類としては西洋史だが、実際読むと処女にまつわる誤解は日本人も同じ誤解をしているのではないだろうか、と思われる記述がそこかしこにある。また、ポルノビデオやポルノコミックで多用される表現の根源と思われるものについても本書では言及されているので、性表現に興味がある人にもおすすめしたい。
イデオロギーや政治的思惑や宗教的価値観によって翻弄され拗られていく「処女性」を本書で見つめることは、あなたの内にある「性」にまつわるもやもやや誤解や疑念を解消するきっかけになるかもしれない。
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盆踊り 乱交の民俗学
乱交:複数人が集まって、それぞれ不特定の相手と性交すること。
その"乱交"が盆踊りとどう結びつくのか。古代の歌垣を皮切りに、ムラ社会における性文化を紐解き、どのようにして仏教行事である盂蘭盆を起源とする盆踊りと融合していったのか、を大胆に考察した一書。
わかり易さを求めてか興味を惹かせるためか「乱交」と銘打っているが、厳密には、かつては盆踊り、つまり祭が「合意→即本番」という含意がある合コンまたはお見合いのような舞台でもあった、ということだった。また、マクロの視点では集団での行為とはいえ、ミクロの視点では不特定ではなくあくまで一対一での行為だったあたり、古代日本の婚姻制度が「原始乱婚制」ではなく「原始一夫一婦制」だったということを再確認できるのではないか。
男性の求婚に対し女性に拒否権も主導権もあった、かつて雑魚寝は"乱交"の一形態で寺社仏閣の一角で行われていた、盆踊りがそもそも原型からして元々性的要素を含んでいた、など読む人によってはカルチャーショックを受けるかもしれない。
そもそも性の要素を「下品」や「猥褻」などという"偏見"で排除することは、文化を正しく理解できなくなるだけでなく、性≒悪という刷り込みから性行為や正知識まで正しく学べなくなるのでは。学校での性行為を含めた性教育に対する反対運動などを見るに、私はそう不安を覚えるのだ。