新編 真ク・リトル・リトル神話大系3
ヘンリー・カットナーはかつて作家のエージェントとして働いていた経験から、多彩なジャンルで活躍していました。デビュー作である「墓地の鼠」はラヴクラフトの色が強かったことから、彼の代作では、とも噂されたそうです。
3集は、カットナーのクトゥルフ神話代表作品である『セイレムの怪異』やラヴクラフトが添削したことで彼の色が加えられた『メデューサの呪い』など8編を収録。
以下、ちょっとだけネタバレありの各話感想。
テーマ:SF・ホラー・ファンタジー - ジャンル:小説・文学
新編 真ク・リトル・リトル神話大系2
クトゥルフ神話はラヴクラフトが創始者ですが、彼一人で作り上げたものではありませんでした。様々な作家がこの「遊び」に参加し、自由に創造の翼を広げてこの世界を開拓していきました。
2集はラヴクラフトやロングなど5人の作家によるリレー小説『彼方よりの挑戦』など13編を収録。以下、少々ネタバレありの各話感想。
テーマ:SF・ホラー・ファンタジー - ジャンル:小説・文学
新編 真ク・リトル・リトル神話大系1
ク・リトル・リトル神話――クトゥルフ神話とも呼ばれるそれは、アメリカの作家であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトが創始し、フランク・ベルナップ・ロングやクラーク・アシュトン・スミスらが広げ、オーガスト・ダーレスらが体系化した、架空の神話体系です。最初は作家同士で架空の神々や地名や書物等といった固有情報や世界観を創作し、共有し、貸し借りする遊びでした。それに読者も気づいたことで追従者が続出し、それに伴って神話体系も拡大・拡散していきました。
本シリーズは創始者であるラヴクラフトを始め、1989年までに発表されたクトゥルフ神話をモチーフとした作品を掲載したアンソロジー集です。1982年に刊行された旧シリーズから小説作品のみを抽出して再編されました。ゆえに「新編」なのです。
彼らが楽しみつつ広げていったこの異界へと続く扉、それでは開けてみましょう――。
今巻は、かの有名な「無名都市」を舞台にしたラヴクラフトの作品を含む6編を収録。
以下、ちょっとだけネタバレありの各話感想。
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乱交の文化史
本書は古代ギリシア・ローマの都市圏における性の文化を皮切りに、豊富な図像――絵画や写真――を交えて現代にまで至る乱痴気騒ぎの西洋史を紐解いている。また、日本語版のボーナストラックとして、日本における乱交についての章が設けられており、日欧の性を比較する上でも有用な内容となっている。
性にクローズアップして歴史を俯瞰して見れば、過度な禁欲も過度な放蕩も、結局は性の倒錯を招いているのがわかる。溜めては出す。バランスが大事なのだ。
「西洋化が進む以前の日本は性に対しておおらかだった」という意見は時折見かけるが、それでは当の西洋はどうだったのか。
その答えは「向こうも同じ」。キリスト教的、清教徒的思想が主流となる以前、娯楽がなかった時代において、性行為は数少ない娯楽でありストレス発散の手段だった。それは聖職者にとってもだ!
日本が開国した当時、欧州は最も性に厳格な時代―ヴィクトリア朝時代だ――だったので、もう一、二世紀早く開国していたら、もしかしたら日本の性は官憲に厳しく取り締まられるようなことにはならなかったかもしれない。
アーカム計画
蒐集家のキースが骨董屋で惹かれた絵を購入したことを契機に、ラヴクラフトの作品を彷彿とさせる事件が周囲で続発する。ラヴクラフトが自作に真実を紛れ込ませて人々に伝えようとしていたと理解したキースは、邪神復活を阻止するために南太平洋に向かう――。(第1部)
モデルのケイは、別れた夫の遺産を相続することになる。前夫の家に入ると、そこには銀行員を名乗るパワーズという男がいた。パワーズに夕食に誘われるが、出し抜けにラヴクラフトの話題を出されて不審に思い、食事もそこそこに席を立つ。翌日、ある宗教団体からモデルの仕事が来る。現場で出迎えたのはナイ神父という黒尽くめの男だった――。(第2部)
ジャーナリストのマークは、テロ活動を行っているとされている宗教団体について調べていた。しかし彼の養父は頑なにその存在を否定し、調査を止めることを強要してくる。その夜、恋人と寝ていたマークは強い地震に襲われるが、直後、犬のような面相をした怪物が地底から現れる――。(第3部)
クトゥルフ神話を一度完結させたと言ってもいい、クトゥルフ神話小説の集大成にして総決算。そしてクトゥルフ神話の、現代との親和性の高さを明示した点で、金字塔的な作品でもある。敬愛していたラヴクラフトのパスティーシュを散りばめさせ、そして彼が生前に書くことのなかった結末をフィニッシュにすることで、本書はラヴクラフトに対する鎮魂曲(レクイエム)ともなった。ブロックが作曲し、強壮なる使者が指揮棒を振り、神話生物たちが奏でる壮大な交響楽(シンフォニー)。ぜひ一度は堪能してほしい。
※ネタ元となったラヴクラフトの作品一覧
◆ピックマンのモデル
◆潜み棲む恐怖
◆ランドルフ・カーターの陳述
◆闇に囁くもの
◆クトゥルフの呼び声
◆ナイアルラトホテプ
◆闇をさまようもの
◆霧の高みの不思議な家
◆忌み嫌われる家
◆壁のなかの鼠
◆冷気
◆インスマスを覆う影
◆戸口にあらわれたもの
◆レッド・フックの恐怖
◆ダニッチの怪
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