クトゥルー(13) (暗黒神話大系シリーズ)
これまで、多くの人々がクトゥルフ神話に新たな解釈や設定の追加をしてきました。
それらを全て正とすべきか、生じた矛盾や綻びをどう補正すればよいのか、悩んだ人もいると思います。
私は、自由に取捨選択し、自由に判断し、自由に設定を盛っていいと思っています。
なぜなら、そうした行為や判断も含めて「遊び」の一環だからです。
別の言い方をすれば、それらは全て人間側、特に宇宙的恐怖に関わって正気が削れてしまった人の主観であり、結局、解釈は受け手次第なのです。
シリーズはこれにて最終巻。ダーレスやブロックなどの作品9編を収録。
『彼方からあらわれたもの』(ダーレス/1951)
巡査がわたしの診療所に連れてきたのは、酷いショック状態に陥っているジェフリイだった。彼の足跡を調べるうちに、どうやら彼が「彼方からあらわれたもの」の封印を解いてしまったことがわかる。新たな犠牲者も出たことから、わたしは彼の友人らと共に、それを再び封印するために廃修道院へ赴くことに――。
『エリック・ホウムの死』(ダーレス/1939)
エリック・ホウム変死事件の検死審問(検死官と陪審員が集まり関係者の証言を聞いて死因の評決を下す制度)が開かれる。最後に彼と電話をしていた友人が証言した「実験」のあらましとは――。
『遙かな地底で』(ジョンスン/1939)
ニューヨークの地下で毎夜、人知れず行われる戦い。それは、地下鉄事故を起こしてその死体を貪らんとする異形たちと、それを阻止する特別班たちの攻防戦だった。そしてその長年に渡る戦いは、特別班たちの心身を確実に蝕んでいた――。
『本を守護する者』(ハーセ/1937)
人知を超えるような稀覯書を求めて古書店を渉猟していたわたしは、ある古書店で出会った異様な男から、あの『ネクロノミコン』をも超越する凶々しい内容という本を、半ば無理矢理に受け取らされる。疑いながらも自室でその本を開くと、書かれている字が動き出して――。
『哄笑する食屍鬼』(ブロック/1936)
精神科医のわたしの元を訪れたチョーピン教授。彼は自身を悩ましている奇妙な夢について、そして夢の内容がありのままの事実であることをわたしに訴える。わたしは教授の説得に応じ、彼が夢で見た場所に二人で赴くことに――。
『ブバスティスの子ら』(ブロック/1936)
わたしは学友であるマルカムに会いに、彼が住むコーンウォールの屋敷を訪れる。オカルティストである彼は地元に伝わる神話を検証し、この近くで古代エジプト人が入植したと思われる痕跡が残った洞窟を発見していた。翌日、彼とともにその洞窟に入ると、中には古代エジプトの意匠を思わせる石棺が並んでいて――。
『恐怖の鐘』(カットナー/1939)
カリフォルニアの山脈にある洞窟内で、かつて聖ザビエル伝道本部にあり、原住民の呪いがかけられた伝承のある失われた鐘が発見される。歴史協会会長のトッドから応援を頼まれたわたしはその山を登っていると、自らの目を潰す蟾蜍の姿を目撃する。さらに二人の作業員が異常な死を遂げるが、鐘は予定通りに衆目にお披露目されることになる。そして当日、にわかに地震が起き、その揺れで鐘が鳴り出して――。
『緑の深淵の落とし子』(トムスン/1946)
都会の激務に疲れた脳外科医のわたしは、海辺の村にある別荘を借りる。ある嵐の晩、別荘を訪れたカッサンドラの求めに応じ、わたしは彼女の父を診察するが、それをきっかけにわたしは彼女と交際し結婚する。しかし、日を追うごとに彼女に変化が生じ、わたしは不安を募らせていく――。
『深きものども』(ウェイド/1969)
カリフォルニアにある動物学研究所で働くことになったわたし。上司にあたるウィルヘルム教授は、人とイルカのテレパシーによるコミュニケーション実験を試みていた。実験が進むにつれて、被験者であるジョウに副作用と思われる反応が生じるが、ジョウも教授もそれを好意的に捉えて実験は続けられる。そこまで日誌に綴ったところで、ジョウの叫び声が聞こえてきて――。
以下、少々ネタバレ。
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