実話怪談 出没地帯
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いないはずの第三者が現れた、北大塚のラブホテル。
江戸時代に処刑された刑罰者のように白い布で顔を隠した何者かを目撃した、目黒の邸宅の敷地内にある蔵。
不気味な子供を見かけた、鎌倉市にある、とある未解決事件の現場。
自身が体験したり、知人から伺った怪奇譚をドライながら生々しい筆致でつづった実話怪談集。
現在も存在する場所もあれば、今はもうない場所もある。しかし建物はないが土地は残っている。もしそこに新たに何かが建てられたら。もし自分がそこを訪れることになったら……。
情報が伝わらないだけで、きっと、こういう場所はもっとあるのだろう。生者・死者を問わず、人の思いが建物や土地のそこかしこに染み込み、電波と同じく、波長が合わない人間には何も見えず聞こえず感じられず、波長が合った人間の前でのみ再生される。だから同じ場所で見た人と見なかった人が出る。
そして本書に限らず全ての怪談に通ずることだが、真にゾッとするのは、『タクシーの夜』など「なんだかよくわからないもの」の話だ。幽霊でもなく、自身の体験故に都市伝説でもなく、錯覚の類でもない。「そういうことか」と得心する結末もなく、ただ厭な気持ちだけが残る話。
そういう話は、怖いというより、ただただ厭らしい。だからゾッとする。
悲衛伝
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地球と戦うための新たな力とするために、宇宙に浮かぶ人工衛星の中で科学と魔法の融合実験を続ける地球撲滅軍・不明室のツートップである、左博士と酸ヶ湯博士。そんな二人の実験に付き合わされるべく同行している、“醜悪”と呼ばれる英雄・空々空とその仲間(?)たち。
何が起きても感動せず、全てを受け入れる異形の精神を持った、自室に戻った英雄を待ち受けていたのは、“月”を名乗るバニーガールだった。
彼女が英雄に接触してきた目的。それは「衛星である自分を含めた全ての惑星を“説得”してみないか」という提案だった。成功すれば、人類と地球の停戦が実現するかもしれないという。
星を説得するという、前代未聞の難題に、異形の英雄はどう立ち向かうのか。
星々の擬人化には前例があったし、悲鳴伝で園児の姿をした地球が出ていたので驚きは小さかったが、その結末の驚きは大きかった。「そう来るか!」と。次巻がどのように展開するのか凄く気になる結末。
結物語
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今日、私は十六本目の国境を消しました。”
警察官となり、直江津署で働きはじめた阿良々木暦。
その直江津署だけでなく、日本の公的機関全てが浮足立つ事態が発生した。
海外に渡り、世界中からその言動と動向を注目され続けている彼女が、日本に帰ってくるというのだ。
彼女と再会した時、暦が伝えた“悪いこと”とは――
阿良々木暦を主軸に、月日を経て成長し、それぞれの道を歩んでいる関係者たちを描いた4編を収録した最新刊。月日を経て変わった所もあれば変わらない所もあり、「成長するってこういうことなのかな」って思ってみたり。高校を卒業して以降没交渉だった同窓生と再会したような読後感が。
あと警察官として行動する阿良々木さんの服装のイメージが、どうしても『踊る大捜査線』の青島さんになってしまうのはなぜだ。若さとか青春とか青臭さとかからだろうか。