定本 映画術
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漫画家の荒木飛呂彦氏も作品作りの参考にしていると言う、映画作家のフランソワ・トリュフォーと、映画監督のアルフレッド・ヒッチコックの対談集。トリュフォーがヒッチコックにインタビューを行い、ヒッチコックがそれに答える形式となっています。
映画のプロットの根源にある幼年期の体験。観客を惹きこませる映像の撮り方。映画に対するこだわりまで、ヒッチコックが赤裸々に語っています。「敵役が魅力的な映画は良い映画」「写実的に撮るばかりが良いとは限らない」「観客は皆のぞき魔である」など、語られた当時撮影に用いられた撮影技法や心理トリックは、今でも通じるものがあると実感します。
厚く、重いですが、映画が好きな人、映画業界に憧れる人、その他小説に漫画にゲームに3DソフトにMikuMikuDanceに、全ての創作活動に携わっている人、興味がある人にオススメしたい一冊です。
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たてもの怪談
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一念発起して引っ越しを考えたKさん。決して安くなく、当たり外れが大きい案件なだけに、何を以って「好物件」かをひたすら考えた結果、出した結論は“運の良い家”だった。 ――しかし。
なまじ様々な方面への知識があり、しかも感性豊かゆえに起きる、物件選びから引っ越し、生活してからの四苦八苦をコミカルかつオカルティックに書き綴った『引越物語』、不幸が起きた家や場所を線で繋いで初めて明らかになる恐怖を描いた『道の話』など、私達にごく身近な道や土地や建物をテーマにしたオカルトエッセー。
怪談、とありますが、著者自身が後書きで書いたように、その内容はどちらかと言えば著者の近況や昔話、そして考察を綴ったエッセー。
再録もありますが、過去作に収録された『道の話』の後日談や都庁の考察など、読み応えは十分。人が居心地良い場所には人以外の存在も間借りするのは当たり前。それが虫であろうと彼岸の存在であろうと謎の存在であろうと。
しかし……。
ここ十数年の首都圏の猛暑の要因の一つがアレだったとは! もし本当だったら、再開発で全部除くか山側に移してほしい。
神曲
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政争に敗れ、国を追われた男がいた。足の行く先、そして心の行く先も判然とせず、迷える彼の前に姿を現したのは、とうに亡くなったはずの偉大なる詩人であった。詩人に導かれ、男は地獄の底へと下り、そして煉獄を通り、天国を目指していく――。
古典文学の傑作の一つであるダンテの『神曲』と、それを効果的に図像化したドレの画を用いた大人向けの絵本。ダン・ブラウンの『インフェルノ』から『神曲』に興味を持ち、原作より読みやすいと思われるこちらを読んでみた。
ただの地獄極楽見物記かと思いきや、自らの苦い過去を地獄を通して振り返り、煉獄を通ることで7つの罪を清め、身も心も軽くして天国へと向かう。その過程は正しく「魂の彷徨」で、基督教色は強いがそれ一色ではないので日本人でも受け入れやすく、重厚で、文学である。
地獄も天国も己の内に有り。卑小でも存在する自身の信念を見失った時、読み返したくなる書籍の一冊。