バタフライ・エフェクト
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エヴァンは少年期、短時間の記憶喪失に悩まされていた。
後年、大学生になったエヴァンは、記憶喪失の治療の一環として書いていた日記を読み返していると、意識が突然、日記を記していた当時へとタイムスリップした。
ただタイムスリップするだけでなく、過去の改変が可能であると気付いたエヴァンは、幼なじみや周囲の人を幸せにすべく行動するが、天秤を釣り合わせるように、誰かが幸せになる一方でどうしても自身も含めた誰かが不幸になる。
何度も失敗や挫折を繰り返した結果、エヴァンが選択した未来は……。
その哀しくも美しい結末が話題になったタイムスリップサスペンス。
タイトルのバタフライ・エフェクトとは科学用語で、「A地点での蝶の羽ばたきが、やがてB地点での異常気象につながることもある」 つまり、最初の僅かな変化が、時として別の場所での大災害の原因となるという、未来予測の難しさ、カオス理論の必要性の説明としてよく用いられる寓話である。日本では似たことわざで「風が吹けば桶屋が儲かる」があるが、それは桶屋が儲かる一方で、別の誰かが大損をしていたり不幸になっていたりしているということでもある。
善意の一言が巡り巡って誰かを不幸にするかもしれないし、悪意の暴力が巡り巡って誰かを幸福にするかもしれない。だが自分の一挙手一投足、一言が巡り巡ってどうなるのかというのは、ラプラスの悪魔が実在していないかぎり誰にもわからないだろう。
エヴァンは未来を変えないという選択はせず、誰かが不幸になる未来を変えようと行動し続ける。これは映画の中だけでなく現実でも同様のことが言える。自らの意志で考え行動することで未来は変わる。親の遺産にあぐらをかいたり白馬の王子様のようなものを待っていたりして動かないでいては、緩やかに下り坂を転げていく可能性もある。
本作は優れたサスペンスであると同時に、行動することの大切さ、そして行動することがいかに覚悟がいるものかを教えてくれる作品でもある。迷いや悩みがあるけれどもなかなか行動できない人に、ぜひ観ていただきたい。
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テーマ:サスペンス・ミステリー - ジャンル:映画
ファーゴ
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多額の借金を抱えるセールスマンが狂言誘拐を計画。妻の誘拐事件を起こし、裕福な義父から身代金を出させ、それを借金の返済に充てる。
しかし借金に苦しむような杜撰な人間が立てた杜撰な計画が上手くいくはずもなく、始まった途端、事態はどんどん最悪の方向へと転がりだして……。
先を考えずに行き当たりばったりで生きる人々を皮肉ったような、シニカルなサスペンス。人によっては雪だるま式に膨らむ負の連鎖に唖然とするし、人によっては観ている内に乾いた笑いが出るかも。
でもここまではいかなくても、現実には先を考えずに生きた結果、どこにも進めなくなって犯罪で生活費を稼ごうとする人もいる。そう考えると深い映画……なんてね。
荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟
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『ジョジョ』で御馴染の荒木飛呂彦。音楽も大好きだが映画・ドラマも大好きな著者の持論は、
【ホラー】をキーワードに映画を語った前作に続き、今度は【サスペンス】をキーワードに、著者が薦める映画の解説と【サスペンス】の魅力について語り尽くした、ムーヴィー・エッセー第2弾!
付録に「荒木飛呂彦が選ぶサスペンス映画ランキング」があります。
タイトルに『超偏愛!』とあるように、今度は「サスペンス」に偏った【愛】を全開にして、映画を語っていますので、これを読むと観た事がない映画を観たくなる。(笑)
映画の観方には、何も考えずにただぼうっ、と映画を観る「バカ」の観方、理想化しながら観る「ボケ」の観方、普通の人はそんな観方をしない「パア」の観方、と三種類の観方がありますが、映画を観るだけでなく読み(分析し)、その上で読み解いた作品の背景や制作側の意図等を楽しむ荒木飛呂彦の映画の観方は、まさしく「ボケ」の観方です。
映画はただ観るだけでも楽しいし面白いが、観るだけでなく読んでみると更に楽しくなるし、面白くなる。荒木飛呂彦の【映画愛】はその事を教えてくれます。