水撒き
「ん……」
薄く雲が広がっている、ある夏の日の夕方。準備を終えて庭に水を撒き始めると、頭に何かが触れた。続いて右腕に。 右腕。 右腕。 左腕。
「夕立か」
ぽつぽつと。
水滴が身体に当たる。
本降りになる前に蛇口を締め、ホースを片付け、家の中に戻ったのだが。
「あら」
それから数分も経たない内に、雨はあがってしまった。
「んだよ。結局水撒きしなきゃならんのか……」
渋々と、再び外に出てホースを用意していると。
「えー」
また、ぽつぽつと水滴が落ちてきた。
様子を見るためにしばらくそのままでいたが、降るでもなく、止むでもなく、どうにも半端な降り具合だ。
「んー……」
しばらく悩んで、結局、水撒きを再開することにした。じゃばじゃばじゃば、と。地面に潤いを与えていく。降っている雨は変わらずぽつぽつと降るだけで、ホースで撒いてる分の一分程も地面を潤していない。
やがて水撒きを終え、蛇口を締め、ホースを片付けて家の中に戻った途端。
どざーーー……と。
本格的に雨が降ってきた。
思わず泣き声交じりで叫んだ。
「もっと早く降れよ!」
薄く雲が広がっている、ある夏の日の夕方。準備を終えて庭に水を撒き始めると、頭に何かが触れた。続いて右腕に。 右腕。 右腕。 左腕。
「夕立か」
ぽつぽつと。
水滴が身体に当たる。
本降りになる前に蛇口を締め、ホースを片付け、家の中に戻ったのだが。
「あら」
それから数分も経たない内に、雨はあがってしまった。
「んだよ。結局水撒きしなきゃならんのか……」
渋々と、再び外に出てホースを用意していると。
「えー」
また、ぽつぽつと水滴が落ちてきた。
様子を見るためにしばらくそのままでいたが、降るでもなく、止むでもなく、どうにも半端な降り具合だ。
「んー……」
しばらく悩んで、結局、水撒きを再開することにした。じゃばじゃばじゃば、と。地面に潤いを与えていく。降っている雨は変わらずぽつぽつと降るだけで、ホースで撒いてる分の一分程も地面を潤していない。
やがて水撒きを終え、蛇口を締め、ホースを片付けて家の中に戻った途端。
どざーーー……と。
本格的に雨が降ってきた。
思わず泣き声交じりで叫んだ。
「もっと早く降れよ!」
【※事実を基にしたフィクションです。(笑)(^-^)】
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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
詠ませていただきます。
およびでない
有事に使えぬ
予備機など
まつりごと
喧嘩神輿に
客は野次
早朝に
声を嗄らせる
方々に
その閑なしと
聴く耳持たぬ
掌編 「魍魎」
ジーーーーーーーーーーーーーーーー…………
……。
…………。
………………。
……………………。
……………………暑い。
線路から、ゆらぁり、ゆらぁり、と陽炎が立っている。
無風のホームに響く蝉の声が耳に障る。
粘っこい唾液が体内の水分の少なさを強調する。
体臭が気化した汗と共に鼻に入る。
吹き出た汗が衣服を濡らす。
五感からの情報が不快感を強くする。
電車はまだ来ない。
一人で佇んでいると、だんだん頭が、ぼうっ、としてくる。
視線が線路に固定されていく。
じっ、と線路を見る。
だんだんと、頭が向こう側へ下がっていく。時折頭を戻すが、また、だんだんと下がっていく。
足が進む。陽炎のように、ゆらぁり、ゆらぁり、と進む。
向こう側へ。向こう側へ。向こう側へ。向こう側へ。
あちら側へ。あちら側へ。あちら側へ。あちら側へ。
肩を摑まれた。気が付くと、片足が黄色い線のすぐ側にあった。先ほどとは違う汗が、どっ、と吹き出た。
「気をつけなさい。魍魎に引き込まれるわよ」
……。
…………。
………………。
……………………。
……………………暑い。
線路から、ゆらぁり、ゆらぁり、と陽炎が立っている。
無風のホームに響く蝉の声が耳に障る。
粘っこい唾液が体内の水分の少なさを強調する。
体臭が気化した汗と共に鼻に入る。
吹き出た汗が衣服を濡らす。
五感からの情報が不快感を強くする。
電車はまだ来ない。
一人で佇んでいると、だんだん頭が、ぼうっ、としてくる。
視線が線路に固定されていく。
じっ、と線路を見る。
だんだんと、頭が向こう側へ下がっていく。時折頭を戻すが、また、だんだんと下がっていく。
足が進む。陽炎のように、ゆらぁり、ゆらぁり、と進む。
向こう側へ。向こう側へ。向こう側へ。向こう側へ。
あちら側へ。あちら側へ。あちら側へ。あちら側へ。
肩を摑まれた。気が付くと、片足が黄色い線のすぐ側にあった。先ほどとは違う汗が、どっ、と吹き出た。
「気をつけなさい。魍魎に引き込まれるわよ」
掌編 「トオリモノ」
「ふー」
「お疲れさん」
「あ、井上さん。恐れ入ります」
「今日捕まえたあいつ。取調で何て言っていた?」
「まあ、流行りの常套句ですよ。つい手が出た、です。人をホームから突き飛ばしておいて、それで通用すると、本当に思っているんですかね」
「…………」
「井上さん?」
「……お前さ、トオリモノって、知ってるか?」
「お疲れさん」
「あ、井上さん。恐れ入ります」
「今日捕まえたあいつ。取調で何て言っていた?」
「まあ、流行りの常套句ですよ。つい手が出た、です。人をホームから突き飛ばしておいて、それで通用すると、本当に思っているんですかね」
「…………」
「井上さん?」
「……お前さ、トオリモノって、知ってるか?」
掌編 『とある晴れた日に』
「せんせー、おはよーございまーす」
「やあ、おはよう」
「せんせー、ちょっときいてー」
「んー、何だい?」
「へんなひとにあったのー」
「変な人? どんな人?」
「はれているのにかさをさしてたのー」
「傘を? 日傘じゃなくて?」
「んー、たぶんちがうとおもう。えのぐのね、んーと、ぐんじょういろのかさなのー」
「ふーん……。晴れた日に雨傘を差した人か……」
「へんなひとでしょー」
「……いや、そうでもないかも」
「どうしてー?」
「やあ、おはよう」
「せんせー、ちょっときいてー」
「んー、何だい?」
「へんなひとにあったのー」
「変な人? どんな人?」
「はれているのにかさをさしてたのー」
「傘を? 日傘じゃなくて?」
「んー、たぶんちがうとおもう。えのぐのね、んーと、ぐんじょういろのかさなのー」
「ふーん……。晴れた日に雨傘を差した人か……」
「へんなひとでしょー」
「……いや、そうでもないかも」
「どうしてー?」